2016年08月13日

再就職を目指す女性たちのお役に立ちたい パート2

 先般6月27日の朝日新聞の朝刊に、結婚を機に退社する女性が送別会で「ほんとは辞めたくないのです。女性のキャリアと家庭の両立ができる職場になってください」と涙ながら語っていたと出ていた。
 働き続けたいと願いながら、結婚や出産で退職を余儀なくされる女性は少なくない。
 最近の数字ではその数は年間36万人いるという。
 しかし、働き手が不足して来た今日では一度職場を去って家庭に入った人でもカムバックするチャンスを与えて労働力を確保しようという動きが出てきたようである。
 
 同新聞には、米菓大手の亀田製菓は少しでも現状を変えようと、結婚や育児、介護などで退職する際、望めば再入社の道を残すことができる復職の制度を設けたとあった。
 同社では希望者は退社時に登録し、6年以内なら面接だけで復帰できるという。同社の人気商品ハッピーターンにちなみハッピーリターン制度と命名されたそうだ。
 亀田製菓のこの制度設定は喜ばしいことであるが、よく考えてみれば、女性が結婚した、出産したからといって『寿退社』ということで雇用の機会を奪うのは、女性に対して失礼な話であり、他の企業も亀田製菓をぜひ見習って欲しいものである。
 家庭に入った主婦を労働力として当てにするようになって来たといっても、主婦労働者はあくまでも補助労働力とみなして、男子社員と同じように扱わないところの方がまだまだ多いと思う。
 働きたい女性がそのような扱いを望んでいるかといえば決してそんなことはない。

 私は昨年より私の母校である明治大学が再就職を目指す女性のために開講した「スマートキャリアプログラム」という名前の講座の講師を務めている。
 このプログラムは結婚・出産・介護など色々な理由でいったん家庭に入ったものの、子育てなども終わり、再度、どこかに就職して働きたいと思ったが、実務に遠ざかっていたため自分の希望する仕事に就くのは難しいかもしれないと考えて、実務に役立つ勉強をしてから再就職を期そうという人達のものである。
 受講者の皆さんはアルバイト、パート、契約社員ということであれば仕事は容易に見つかるが、そのような不安定な雇用ではなく、正規社員として働くことを希望する人達が大部分である。
 昨年の春は約40名の受講者、秋は少し減って約30名、今年の春は60名を越す受講者があり、大部分の方はウイークデーに受講されているが、現在アルバイト、パート、契約社員で働いている方は参加しやすい夜間・土曜日に受講されている。
 受講者の年齢はウイークデーのコースは30代の中間あたりから50代の前半で、平均年齢は40歳前後でないかと思われる。夜間・土曜日のコースは比較的若い人が多く、20代前半から40代前半の方が多い。
 受講者はどの方も大変熱心で、講義中に眠るような不心得者は誰一人としていない。
 私の拙い話を食い入るようにして聞いてくれるので、私も必然的に力が入る。
 今春のコースで休憩時間に受講者の皆さんと雑談したら、そのうちのお一人が私に「私は指示待ち社員の現状から抜け出したいのです」と言う。「どういうことですか?」と聞くと「私は数年前から、ある役所で派遣社員として働いています。そこに配属になった初日に『あなたは指示されたことだけをやればいいのです。それ以上でもそれ以下でもありません』と言われました。手が空き、他の人が忙しそうにしているので、お手伝いを申し出ても、派遣社員だからということで仕事をさせてもらえません。自分のこれまで働いてきた経験から、もっと効率的にできるのにと思って改善方を提案したいと思ってもそれは許されず悔しい思いをしています。私はもっともっとバリバリと仕事をしたいのです。この講座を受けて、正規社員として採用していただいて、創意工夫が許される仕事に就きたいのです」と言う。
 働き手がいないといって嘆いている企業経営者は多いが、このような前向きな姿勢の人達を見逃すのはもったいない話である。

 女性だからできる、それも主婦体験を持つという女性だからこそ力を発揮してもらえる仕事があるはずである。
 結婚・出産でビジネスの現場から離れて、主婦業に専念していたことが全面的にマイナスかというとそんなことはない。
 最近放送された「ガイアの夜明け『働き方が変わる』」に登場した再就職を期そうとしている女性の言葉に「私たちの強みは図太さです。子育てを通じて予測不可能なことが連続して起きても、どれから、どのようにしたらよいか落ち着いて対処できます」とあったが、それらは新卒者にないもので、子育てを体験した主婦には優先順位をつけて物事に当たるというビジネスに直結する能力を身につけているといえる。

 主婦はイコール消費者であり、主婦体験者は消費者としての厳しい目を持っている。
 以前、大阪に出張した際、梅田にある売れ行きが伸び悩んでいるという東京から進出したA百貨店の売り場を見させてもらったことがある。この百貨店は数年前、京都駅前に出店したが、その時は想定以上に売れて大成功したという話を聞いていたので、私は梅田店の不振は何故なのかと不思議に思い、現場のマネジャーにも聞いたが「よく分からない」と言う。
 A百貨店の売り場を見学した翌日、大阪で他の会社の研修があり、参加者の中にいかにも「大阪のおばちゃん」という感じの人が数人いた。休憩時間の際、その人達とA百貨店の売り上げ伸び悩みのことを話題にした。すると一人の人が「当たり前です。あの売り場では売れません。あれは東京の人、それも男性があの売り場構成をしたと思います。大阪の人と東京の人とでは違います。大阪の主婦の感覚で売り場構成をしなかったところに失敗の原因はあると思います。大阪の他の百貨店をよく見たら分かるはずです。『大阪のおばちゃん』を馬鹿にした結果です」ときついことを言われる。
 私にはどこがどう違うのか細部は分からないが、主婦の目、それも厳しい大阪人の主婦の目から見ると買いたい気持ちにさせないような部分がいくつもあるのだろう。
 A百貨店の梅田店には女性社員、それも「大阪のおばちゃん」もいると思う。店の責任者がその人達の意見に謙虚に耳を傾け、その人達に売り場構成を任せたら別の展開になるのではないかと思われた。

 主婦に限らず女性を活かしたらいいのにと思った例をもう一つ挙げると、先日、テレビを見ていたら、高級レストランだと思われるが、シェフと思われる男性とそのスタッフの男性数人が口紅をつけてワインの試飲をしていた。
 なぜそんなことをしているのかと不思議に思って見ていると、画面に登場した男性は 「自分達男性は口紅をつけてワインを飲んだ経験はない。ところがお客様は男性だけでなく女性も沢山来られる。女性の多くは口紅をつけている。口紅をつけてワインを飲むと味わいが微妙に違うのではないか? 口紅をつけた女性になったつもりで自分達が出したワインがどんな味がするかを確認してみよう」ということで、わざわざ口紅を塗って試飲していると言う。
 私には男性が口紅を塗るまでもなく、口紅をつけている女性を採用して、メンバーに加えれば問題は容易に、さらによい方向に解決すると思われた。
 このような女性を活用したらよいという例がいっぱいあるはずである。

 冒頭の朝日新聞の記事にあったようにキャリアと家庭の両立を望む人はますます増えてくると思われる。NTTデータ、リクルートのように在宅勤務という制度を取り入れる企業も少しずつ増えて来ている。在宅勤務が許されるようになれば、女性の皆さんの働く機会は格段に増えると思うが、そういう制度が適用になる業種・職種はそれほど多くない。
 仕事の開始・終了の時間はともかく、やはり職場に行って他の人達と協力して働くという形態を取る事業所の方が圧倒的多数であろう。
 「スマートキャリアプログラム」を受講した女性の多くは主婦であり、家庭の主婦としての仕事もこなさなければならないので、朝9時から夕方18時までのフルタイムの勤務は難しく、できれば午前10時頃から午後4時頃まで、時間外勤務なしで働きたいという希望を持っている。
 昨年の秋の受講者の一人であったSさんは独身時代は大手企業に勤めていたが、結婚を期に家庭に入った。
 子育てにも目鼻が付いたので、「スマートキャリア」に入校して真剣に学び、その上で再就職活動を始めた。いくつかの企業に「自分は午前10時から午後4時までであれば毎日勤務できます。ただし時間外勤務はできません。それでよかったら採用していただきたい」と自分から勤務条件を提示して就職活動したところ、このSさんの能力の高さと意欲を評価してくれた企業から正規社員として雇用しますと返事をいただいたという嬉しい知らせが私にあった。
 時間的な制約があるとしても、受け入れ側の工夫次第で、それは何とかなると思う。
 労働力不足が顕著になって来ているだけに、受け入れ側の企業は女性を積極的に雇用すると共に、その女性が家庭と両立できるような働き方を真剣に考えて欲しいと私は切に願っている。 

posted by 今井繁之 at 10:19| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする