2020年03月19日

専業主婦から職場の戦力になる


先日、テレビの画面を見るともなしに見ていたら、画面に美しい女性が登場し、大きな会社の役員会議室みたいなところで、役員らしき男性の皆さんを前にして、プレゼンテーションをしている場面に遭遇した。女性は素人ではなく、俳優さんみたいで、テレビドラマの一シーンと思われた。
ドラマの中で、その女性は次のようなことを話していた。
 「私は大学卒業後、貿易会社に就職、結婚・出産のため30歳で家庭に入り、専業主婦として17年間を過ごしました。
 主婦に専念した17年間という期間は、仕事においてはブランクでしたが、だからといって、今、自分の力が仕事で通用しないとはまったく 思っていません。
  主婦としての体験は仕事に活かせることばかりです。言葉の通じない生まれたばかりの子育てでは24時間、365日付き合います。嫌に なっても辞められません。根気強くなります。
  子供が成長すれば遊びばかりで勉強しなくなったり、思春期になれば口を利いてくれなくなったりします。母親は知恵と工夫を絞り出して 対処します。
  PTAでも色々な人がいました。家庭環境、価値観も異なるので意見がぶつかります。お互いを尊重して、一つ一つクリアしていくことで 協調性が身に付きました。
  主婦業で得たものは決して家の中だけでしか通用しないものではありません。
  どうか主婦を社会の中に埋もれたままにしないでください。
  主婦の可能性を見てください。
  主婦の力を、主婦の可能性を信じてください」
 実に素晴らしいプレゼンテーションで、このプレゼンテーションを聞いていた、その会社の社長と思われる方の「面白い話だ! 今の話は次の経営会議にかけよう」という発言で、この場面は終わった。
 私は一体これは何のドラマなのだろうと思った。
 後で分かったことだがこれは4回か5回の連続ドラマで、私の見たのは最終回であった。 ドラマのタイトルは『主婦カツ!』というもので、主人公の女性を演じていたのは鈴木保奈美さんという女優さんだった。
 そして、このドラマは薄井シンシアという女性が自分の体験を書いた「専業主婦が就職するまでにやっておくべき8つのこと」(KADOKAWA)をベースにして、NHKが製作したものであるということが分かった。
 興味を引かれた私は薄井さんの書かれたその本を書店で求めて読んでみた。
 同書に薄井さんのプロフィールが出ており、薄井さんは1959年、フィリピンの華僑の家に生まれ、結婚した夫は日本人で外交官であった。出産を機に退職、家庭に入ったが、専業主婦として知らず知らずに得ていた経験や能力を活かし、混乱を極めていたバンコクの小学校のカフェテリアを給食のおばちゃんとして活躍、見事に改善して人気のカフェテリアにした。そこで得た自信や確信を胸に、新しい世界に羽ばたいた。そして何と5つ星ラグジュアリーホテルの勤務を経て、現在は日本コカ・コーラの東京2020オリンピックのホスピタリティ担当という要職に就いているとあった。
 同書に書かれていた薄井さんの主張の一部を記すと次のようになる。
 私は主婦であれば皆がやっている毎日の家事・育児を一生懸命やってきました。買い物、料理、洗濯に炊事、そのほか細々とした雑用を並行してこなし、育児においては、小さくて言葉も分からない相手にものごとを理解させ、納得させて来ました。その積み重ねがどれほど実務的な仕事を効率的にこなす能力を育ててくれたか分かりません。
 PTAや地域活動で育まれて来た調整力や忍耐力が仕事を進める上で有効に働きました。 夫や子供に提供してきたホスピタリティが、サービスがより求められる時代にあって大変役立ちました。
 仕事で様々な苦労に遭遇する度に、私が何とか対処しクリアできているのは、専業主婦というキャリアがその能力を育ててくれたからです。家事育児には仕事に生かせるスキルが確実にあります。
 そして、子育て後の五十代専業主婦の強みは、なんといっても豊かな人生経験です。何しろ子供をひとりの大人に育て上げているのです。私自身、子育てに全力投球でした。言ってもきかない娘にものごとの道理をどう理解させればよいのか。あれもしたい、これもしたいという娘の可能性をどう伸ばしていけばよいのか。これがダメならあの方法でと、試行錯誤した日々を思い返すと、その間に成長したのは娘だけでなく、私自身であったことに気付きました。
 どんなスキルが身に付いたか、というような話ではありません。長い主婦の経験で育まれた、よく気がついたり、てきぱきと(周りの人を)助けたり、人付き合いに長けていたり、人の気持ちを察したり、肝がすわっていたりなど、ひっくるめて人間力の成熟というほかない五十代女性の底力は、二十代の若い力とは別種のものです。そして、もし、その力を上手に活用できたなら、職場の生産性向上に相当貢献できるということを私は経験上知っています。
 上記以外の自分の体験から得た話が記述されているが、この本は専業主婦からビジネスの現場にカムバックしようと考えている人はもちろん、企業の人事・採用担当者にぜひ読んでいただきたいと思った。

 私はたまたま私の母校である明治大学から依頼されて再就職を目指す女性のための「スマートキャリア講座」を担当しているが、三十代から 五十代の女性受講生から聞いた、いくつかの話は薄井さんの書いたものとぴったり一致する。
受講生から聞いた話の一つに「私たちの強みは図太さです。子育てを通じて予測不可能なことが連続して起きても、夫はおろおろするばかりですが、私たち母親はどれから、どのようにしたらよいか落ち着いて対処できます。このことは仕事で何か大変なことが起きても、何をしなければならないか、どれから着手したらよいかと冷静に優先順位をつけてことに対処することと共通します」とあった。
 私の妻を見てもそうだが、女性、それも母親体験のある女性は強いと思う。
 もう一つ、「私たちは主婦の目線で商品やサービスを見て来ました。どうしてこんな馬鹿なことをしているのだろうと呆れることが沢山あります。男性が物事を決めているからだと思います。サービス業、金融業、販売業、保育業、教育業といった分野に厳しい目を持つ主婦を雇用して、責任あるポジションに付ければ必ずや期待に応える結果を出すと思います」と言われた。
 これも薄井さんが同書で語っていることと共通している。
 
 2025年には労働人口が583万人不足するということである。
安倍内閣は若い子育て世代が共働きできるように保育園を増やし、男性の育児休暇取得を促進するという政策を進めようとしている。さらに外国人労働者の雇用をより一層拡大することにより、何とか労働力不足に対応しようとしているが、そのようなことで深刻化する一方の労働人口の不足に到底対応できないと思う。
 しかし、日本には一度は就職して、結婚・出産で家庭に入り、専業主婦となった人達がいる。家庭に入ったが、もう一度ビジネスの世界に戻りたいと考えているこの人達を活かさない手はない。
 企業は子育ての終わった主婦の方の受け入れを真剣に考えるべきである。
 再就職を目指そうとしている主婦の皆さんは主婦業を卒業したわけではなく、引き続き家庭の主婦としての仕事はこなさなければならないので、午前9時から午後6時までのフルタイムの勤務は難しいかと思う。できれば午前10時から午後4時まで、時間外勤務なしで働けたら主婦業との両立はできる人は多いだろう。
 時間的な制約があっても受入れ側の工夫次第で何とかなると思う。
 それと薄井さんの本を読んでいただくと分かるが、薄井さんは30歳から47歳までの17年間、専業主婦に全力投球したとあるが、子育てが一段落したら、ビジネス社会にカムバックするということを常に念頭においていたということである。娘さんが大学に入学したところで、本格的にカムバックの準備をして、一歩づつ、キャリアアップのステップを踏んだので、今日のポジションを得たといえる。
 むの たけじさんの言葉に「より高く、より遠く跳躍しようとする者は、それだけ助走距離を長くする」とあるが正しくそのとおりで、それなりの助走は絶対必要である。
 薄井さんと同じようにビジネス社会にブランクのあった主婦は、短期の雇用であればともかく、長期の雇用、それも正規雇用を期待して働こうという方は、それなりの助走というか事前準備をしっかりしてから臨むべきである。
自分の持っている力をブラッシュアップするべく努め、即戦力となれるような訓練を受けてから企業の人事・採用担当者にアピールすれば、再就職に成功し、企業とウイン・ウインの関係を築けると思う。
posted by 今井繁之 at 13:20| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください