2019年09月07日

 鉄拳制裁は許されるか?


 私はこれといった趣味のない男だが、唯一あるとすればそれはプロ野球観戦である。  どこのファンかと言われると困るが強いていえば広島カープである。
 その広島カープは2019年のペナントレースの前半、連敗が続き、今年はセ・リーグの覇者になるのは無理ではないのかと思っていた。その矢先、広島カープの監督の緒方孝市氏が全力疾走を怠った野間峻祥選手に鉄拳制裁を加えたことが報じられた。
 なぜ鉄拳制裁をしたかというと、6月30日の横浜DeNA戦、2-2で迎えた延長11回1死で、途中出場していた野間選手の打球は、あたり損ねの投手前へのフライになったが、ノーバウンドで捕球されると勝手に判断した野間選手は全力で走っていなかった。 ところが横浜DeNAのエスコバー投手はワンバウンドで捕球して、態勢を崩しながら一塁に投げた。全力疾走しなかった野間選手の走塁が仇となってアウトとなり、カープはこのチャンスを逸して、この試合は2-2の引き分けに終わった。試合後、緒方監督は監督室に野間選手を呼び、叱責と同時にビンタを複数回くらわせたという。
「ビンタ」というのは掌(手のひら)で相手の頬を打つというものである。
なぜこの一件が外部に漏れたのか分からないが、広島カープの鈴木球団本部長は記者発表で、「行き過ぎた指導だったが、暴力は常習ではなく、両者の信頼関係は壊れていない。野間選手も監督の気持ちを理解しており『暴力だととらえていない』と言っている」と話した。緒方監督は、7月15日の試合前に全選手に謝罪、球団は、同日、同監督に厳重注意という処分を下した。
 ただ、この処分に対して、昨今、アマチュアスポーツ界では体罰が大きな問題となり、各団体、組織が再発防止策を必死に講じており、その動きに逆行するような行為を人気スポーツのプロ野球の監督が行うのはとんでもないとの手厳しい批判が一部にあった。
 
 緒方監督が日頃から暴力を振るっているという話は聞かないので、今回の鉄拳制裁は野間選手に期待しているところが大であり、何とかして巨人に移籍した丸 佳浩選手の後釜に成長して欲しいという期待があったからこそ、このような制裁をしたものと思う。
 あるいはこの日だけでなく、野間選手には怠慢プレーが目立ち、いつか気合いを入れなければいけないという思いがあったかもしれない。
 鉄拳を振るう方も鉄拳を受ける方もお互いの信頼関係があれば、一時的に痛い思いをしても双方の人間関係が崩れることなく、鉄拳を受けた方は感謝することになるから許せるという意見もあるが、果たしてどうであろうか?

 今から半世紀も前の話で恐縮だが、私の中学生の時、先生が生徒にビンタをくらわせる場面があったことを覚えている。
構内でマラソン大会があり、隣のクラスの男子生徒の何人かが折り返し点をターンすることなく、近道をしてゴールに入ったことがあった。ズルをしたということである。
どうしてそれが判明したのか分からないが、そのようなズルをしたことを教師が咎めてビンタをくらわせたというものである。誰がズルしたか、犯人は分からないがズルをした生徒がいたことは確かであった。担任の男性教師はクラスの男子生徒20数名を横一列に並ばせた。教師は「俺は恥ずかしい。不正をした者は名乗りを上げろ!」と言ったが、「自分がやりました」と正直に名乗りを上げる生徒はいなかった。
 教師は「誰がズルしたのかを知っている者は教えてくれ」と言ったが、ズルをしたのは誰なのかを分かっている生徒がいたかと思うが、仲間を庇って申し出る生徒はいなかった。
「分かった。誰も名乗り上げなければ俺はこれから君達にビンタする。名乗り上げるまでビンタする」といって、左端の生徒からビンタしていった。思い切りの力で平手打ちのビンタをした。一巡したが誰も名乗り上げずうつむいている。痛いのか、悔しいのか泣いている生徒もいる。平手打ちを見ているそのクラスの女子生徒も泣いている。クラスの違う私達も固唾を飲んで見守っていた。他の先生方も手を出すことを遠慮して傍観している。
 初回のビンタで名乗り上げる生徒はいなかったので、教師は左端に戻って再びビンタを繰り返した。平手打ちされた生徒は痛かったと思うが、思い切りの平手打ちを20数名の生徒に浴びせている教師はもっと痛かったと思う。2回目の平手打ちにも名乗りを上げる生徒はいなかった。
 教師は涙を流しながら「正直に名乗りを上げてくれ。そうでなければ俺はビンタを続ける」と言って、3回目のビンタを始めようとしたら、生徒の一人が「先生、すみません。ズルをしたのは僕です」と名乗りを上げた。続いて「僕もそうです」「僕もやりました」と名乗りを上げて前に出た。
 「分かった。ビンタをして悪かった。でもズルをしたのは絶対よくない。これから先にも苦しいことがあっても今回のようなズルは絶対するなよ」と言って、ズルをした生徒を一人一人抱き寄せた。そして「男の友情で君達の名前を言わなかった級友に一言謝りなさい」と言って、深々と頭を下げさせた。そして、先生は彼等をかばった生徒達に「申し訳ないことをした」と言って頭を下げた。
 ビンタを受けた生徒の中には頬の腫れた生徒もいたかもしれないが、20数名の生徒を思い切りビンタした先生の手も腫れていたと思う。
 ビンタされなかった私が覚えているぐらいだから、ビンタされて痛い思いをした生徒はこの日のことを一生忘れないと思う。
 後年、私はTBSで放送されたテレビドラマ『3年B組金八先生』シリーズの「腐ったミカン」というタイトルの放送で、学校に抗議して暴力を奮ってあばれた生徒を叱り、思い切りビンタした後で、生徒を抱き締める武田鉄矢扮する金八先生の姿を見て、自分が中学時代に目の前で展開された先生のビンタを思い出した。あのドラマでは金八先生と生徒の間に信頼関係ができていたので、ビンタした後、抱き合い、涙が自然に出てきたと思われる。

 かつては学校現場では生徒が好ましくないことをすれば厳しく叱り、場合によっては鉄拳制裁に転じることは日常茶飯事であったような気がする。
 このことについて親が先生を訴えるという騒ぎに発展したかというと、悪いことをしたのだから、このような叱りがあっても当然と受け止める親が大部分であったかと思う。
 今や時代は変わり、どのような理由があっても、子供相手に、そのような叱りは許されなくなってきていると思う。
 子供相手の場合、鉄拳制裁は一時的には効果はあると思うものの、やはり鉄拳制裁は止めるべきかもしれない。
 ましてや、大人が相手の場合、仮に相手に非があったとしても、鉄拳制裁という手段が効果があるかといえば、それは一時的にショック療法になったとしても、その効果が持続するかといえばどうだろうか?
 かつて中日、阪神、楽天の監督をしていた故星野仙一氏が監督時代、コーチや選手をボコボコに蹴り、殴ったことは有名だった。それでも星野氏の鉄拳は愛情の裏返しであると語られていた。
 しかし、当該コーチや選手が全員そう思っていたかはいささか疑問である。
 星野仙一氏の感情に任せて部下のコーチや選手をボコボコにしたのは決して褒められた行動ではなく、愛情と受け止めなかった人達も結構いたかと思うので、大人相手の暴力はやはりよくないと思う。

 スポーツの世界だけでなく、企業内でも何度も同じようなミスをしたり、職場の人間関係を乱すようなことがあり、注意しても素直に聞き入れない社員がいるかと思う。
 ソフトなたしなめだけでは効果はなく、どうしたらよいものかと切歯扼腕の思いをしている上位者は多いかと思う。
 上司としてはビンタの一つでもおみまいしたいところだが、叱り言葉だけでも「パワハラだ」と言われる今日、ビンタなんかしたら大変な騒ぎになってしまう。
 ここは「忍の一字」で理詰めに説教するしかない。説教する際、1対1がよいかというと、ケースにもよるが、冷静な第三者を立ちあわせて、証人になってもらうのがよい。
 好ましくない行為があったとしたら、何故そのような行為をしたのかを問う。その行為がどのような悪影響があるかを説明する。そして再度そのような行為を起こさないのにはどうするつもりなのか本人の心づもりを確認する。これまでもそのようなお説教しても今回も起こしたとしたら、この次も同じようなことをしたら何らかのペナルティを課すことを明確に話しておく。そのように話しても、同様な行為を繰り返すようであれば、配置転換するしかない。受け入れてくれるところがあれば良いが、そうでなければ辞めていただくしかない。

 プロ野球の選手の話を冒頭にしたが、選手が期待された結果を出せず、シーズンオフに戦力外通告をされて、12球団合同トライアウトを受ける羽目になってから「監督やコーチから指導されたことを真剣に受け止めて努力するべきであった」と反省の弁を述べる選手が多いが、戦力外通告されてから反省しても後の祭りである。
 企業でも同様で、上司は日頃から部下に対して、「真面目に取り組まなければ最終的に損をするのは君自身だよ」と口を酸っぱくして話しておくべきである。
 指導しても同じようなミスを繰り返すような場合、鉄拳制裁したい怒りの気持ちになったとしても、怒りの気持ちにストップをかけて、「私が今、感じていることはどうにもならない。しかし、どう考え、どう行動するかは自分で決めることができる」と自分に言い聞かせて冷静に対応することをお勧めする。

                    
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2019年08月10日

『甘い資産形成話にはご用心』

 
 2019年6月3日に金融庁は「夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯では年金だけに頼って生活していると毎月の不足額は平均で約5万円となります。まだ20年~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1300万円~2000万円になります。よって投資などで資産形成を進めるのがよろしいですよ」という報告書を発表をした。
 「年金」だけではバラ色ではないというのは紛れもない事実であるが、金融庁が資産形成に投資を勧めるというのは、私の不勉強だが、初めてのことではないかと思う。それも積み立てNISAとかiDeCoといった具体的商品を挙げて投資しなさいというのも異常である。 
この金融庁の資産形成の呼び掛けに大変喜んでいる業界があるという。
 銀行、証券会社、郵便局等の金融機関及び個人向けの金融商品を扱っている業者である。
 それらの皆さんは「年金頼みはダメです。銀行に普通預金あるいは定期預金で預けていても金利なんてほとんど付かないから、もっと儲かる金融商品に投資しなければといけません。そのお手伝いを私どもがさせていただきます」と呼び掛けている。
長年勤めた会社を定年退職して、まずまずの退職金をもらった人が一番の狙い目みたいで、そういった人には退職金が振り込まれた銀行から甘い話が持ち掛けられる。
 その勧めに乗って投資信託などに手を出したら退職金の大半は消えてしまう可能性が大である。なぜそんなことを言えるかというと、私自身がそのような苦い体験があるからである。何かのご参考なればと考えて、お恥ずかしながら私の失敗談を以下に記す。

 2006年の秋、私は代表取締役の座を一時期、娘に譲って、シンキングマネジメント研究所の代表の座を降りたことがある。まずまずの退職金をM銀行の普通預金に入れたが、しばらくそのままにしていたところ、M銀行のお客様相談室のH氏が自宅を訪ねてきた。H氏は「今、退職金を定期預金にすると特別な制度があって1%の金利が付くのでそれをお勧めします。6カ月で約20万円の利息が付きます」と言う。低金利の今日、1%は高い金利なので、勧めに従って定期預金にすることにした。それから6カ月後、H氏から連絡が入り、「6カ月の定期預金の期限が来ました。お約束通り20万円の利息が付いたかと思いますが、この後、いかがいたしますか? 資産の有効活用ということで投資信託(ファンド)に投資されたらいかがですか?」と勧められた。
 私は投資信託に関してハイリスク・ハイリターンの商品という認識があったが、H氏は、「国内外の株式や債券、不動産など、多岐にわたる資産を組み入れて運用しており、リスク分散がされているのでご心配されるようなことはありません」と言われる。20万円も儲けさせてもらったこともあり、H氏の「投資信託」の説明を聞くことにした。そして危険ではないという話を真に受けて、3分の1は定期預金にして、後の3分の2は投資信託として運用してもらうことにした。不安はあったが、天下のM銀行が勧めるのだから大丈夫だろう、途中で危険信号が出たら、H氏がどうしたらよいかというアドバイスをしてくれるだろうという甘い期待もあった。
 それからしばらくすると預けた信託資産がどのように推移しているかという「収益分配金再投資のご案内」(兼 支払通知書)が送られて来た。
 2007年の5月から9月までの半年間の推移を見ると、再投資後残高の欄の数字は着実に毎月増えている。分配金の欄を見ると5月から9月のそれをトータルすると100万円を超えている。
 私はH氏に進められた投資信託に投資してよかった、半年で100万円も儲かるなんてありがたいと単純に喜んだ。しかし、その後、M銀行から送られてきた「お取引レポート」という資料を見ると取得価格に対して9月末の評価金額は大幅なマイナスになっている。何かおかしい、自分はひょっとしたら損しているのではないのかと思われてきたので、M銀行に行き、H氏に説明を求めた。
 「私の信託資産の今現在の状況はどうなっているのか正確なことを教えてほしい」と頼むと、「現在は元金割れをしています。でもこんなことはよくあることです。今は底かもしれませんので投資信託は長い目で見て投資された方がよろしいかと思います」と過去のデータを示しながら説明してくれる。
 「あなたにとってはよくあることでも素人の私にとっては大問題だ。この毎月送られてくる『収益分配金再投資のご案内』では再投資残高が増え、さらに分配金があるのに私の評価金額はなぜマイナスになるの?」
 「よく見て下さい。その再投資残高の数字は金額ではありません。それは投資口数であり、一口当たりの再投資の評価金額の上がり下がりによって信託資産は変わってきます。5月の一口当たりの再投資の評価金額は12,000円でしたが、9月には10,000円と下がっています。分配金はあっても相殺されてしまってマイナスになったのです」
 「あなたのいう理屈はよく分からないが、しかし、なぜこんなまぎらわしい表示をするの? 口数ではなく、誰にでも分かるように最初に投資したお金が今現在どの程度の金額になっているかを親切に知らせてくれたら、私のような素人でも投資を続けるべきかどうかの判断がつくが、これでは分からない。おたくでは、金額表示してあると、お客様は自分の信託資産が減っていることがすぐ分かり、大騒ぎするかもしれないということで、素人には実態が分からないように工夫しているのではないの?」と言うと「そんなことはありません。とにかくこういったものは株価と同じで一時的に上がったり下がったりすることはありますので心配は要りません」という答えが返って来た。
 私はH氏の弁を半信半疑ながら一応信用して、しばらくすれば元にもどるかもしれない、と考えてしばらく様子を見ることにしたのが大失敗であった。
 10月に入って送られてきた「お取引レポート」を見るとさらにマイナス幅は広がっている。ところが「収益分配金再投資のご案内」では相変わらず口数は増えて分配金が出ている。この「収益分配金再投資のご案内」は事実を伝えているといえば確かに伝えているが、伝えている相手に実態が正しく伝わらないように不誠実な伝え方をしていると言わざるを得ない。「不誠実な真実」ともいうべきで、巧妙といえば巧妙であり、頭のよい人間が考えそうなことである。詐欺みたいなお知らせである。
 仕事が忙しかったこともあり、解約をせずしばらく様子を見てしまった。翌年になって、アメリカに端を発した金融恐慌で株価が一挙に下落したのにともない私の損失額もさらに増え、とうとう元金の半分以下になりそうになった。M銀行からはこの異常事態になっても何も言ってこない。ついに意を決して解約することにした。解約手数料も引かれて戻って来たのは元金の半分以下の金額であった。泣くに泣けない心境であった。
 私の担当のH氏は他支店に異動したという。H氏から一言の弁明の挨拶もなかった。
 投資信託は預金ではなく、増えることもあるし、減ることもあるという投資だった。
 素人が十分な説明を受けずに投資信託なんてハイリスクなものに手を出したのがいけなかった。
 M銀行を恨んでも仕方ない。金融機関はそのようなものであることを承知しておきながら甘い話に乗ってしまった自分が一番良くない。
 皆が皆、私のように損するわけではないと思うが、損する人の方が多いと思う。投資信託に投資することの怖さを知っていただこうと思い、私の失敗談を長々と述べてしまった。

 超低金利時代となった今、退職金の入った人を金融機関は鵜の目鷹の目で狙っている。 私にM銀行からアプローチがあったように、退職金が振り込まれた方には金融機関から「是非お会いしたい」、「資産形成のお役に立ちたい」というお誘いが来るかと思う。そしてそこで甘い話を聞かされる。私のように不用意にそれに乗ったら大変なことになる。
 昨年発表された金融庁の調査では国内29の銀行で投資信託を購入した個人客について、購入時と2018年3月末時点での評価額を比較、集計した結果、実に客の46%の運用損益がマイナスであったという。もっと多くの人が損していると思ったが意外な数字だったが、今の安倍内閣の発表する数字は嘘だらけだから本当はもっと多くの人がマイナスになっていると思う。
 金融庁の勧めるiDeCoについて、全日本年金者組合東京都本部の芝宮副委員長が週刊新潮誌で「私の体感ではiDeVoの利用客のうち、8割は元本割れをしていると思います」と語っている。
 金融庁の報告書がクローズアップされてから非常に多くの人が儲かると言われる金融商品に投資することに真剣になっているようだ。社会人向けに金融経済教育を行うというファイナンシャルアカデミーが6月17日に「老後に2千万円は本当に必要か」をテーマに開いたセミナーには、当初予定の36人を大幅に超える144人が参加したという。
 インターネット専業証券では、個人投資家の動きが活発化しており、そのうちの一つ楽天証券によると個人型確定拠出年金iDeCoの申込数は報告書発表後に約2倍増え、6月24日に開催したオンラインセミナーは昨年実施した同様のセミナーに比べ3~4割多くの人が視聴したという。

 あの手、この手で騙そうとしている悪徳金融業者もあるようなので、相当用心しないと泣きを見ることは必至である。
 たまたまネットで検索してみたら、そこに100万円預けると1年で7万円の金利が付くという金融商品が紹介されていた。200万預けると14万である。今の低金利の時代、そんなうまい話は絶対ない。最初の1年目は7万円付いたとしても、それに気をよくして、400万円、さらに500万円と預けるお金を増額していくと、ある日、突然、その業者は潰れてしまい、責任者は行方不明ということになりかねない。

 大手証券会社Nの営業マンが「元金保証で1カ月で3%の金利が付きます」と言ってきたので、ついその甘い話に応じたため退職金と相続した財産7300万円を根こそぎ騙し取られた被害者Aさんの記事をつい最近目にした。
天下のN証券だからといって騙さない保証はないという嫌な時代になって来た。
郵便局だからということで信用して加入した生命保険がとんでもないことなっていたと大騒ぎになった日本郵政もNISA・つみたてNISA及び投資信託をお客様に勧めているようだが、郵便局だから悪いことを絶対しないという保証はないので、やはり慎重を期すべきであると思う。

 今や大手であろうと中小であろうと金融機関は美味しいカモを虎視眈々と狙っている。
 でも、何とかしないと老後が不安だという人も多いかと思うが、デフレの今日、デフレに強いのは現金だというので、金利はまったく付かなくても、銀行預金で持っているのが、一番トクな手段だと思うので、今はいたずらに動かないのがよいのかもしれない。
 とにかくうまい話には気をつけていただきたいと切に願うばかりである。
      
posted by 今井繁之 at 12:59| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

2019年06月24日

行蔵は我に存す

   
 日本維新の会に所属なのか、大阪維新の会に所属なのか、どちらでも同じようなものだが、「北方領土を戦争で取り戻す」発言で物議を醸した丸山穂高という衆議院議員に対して国会で議員を辞めるようにという糾弾決議が出されたのに対して、丸山議員は「行藏は我に存す。毀誉は他人の主張、我に与(あずか)らず」という幕末に活躍した勝 海舟の言葉で勧告を拒否したということである。
 丸山議員のようなお粗末な人間に自分が述べた言葉が使われて、地下に眠っている勝 海舟も苦笑しているかと思う。
 「行蔵は我に存す。毀誉は他人の主張、我に与らず」は平易な言葉でいえば、「行いは自分のもの、批評は他人のもの、私が知ったことではない」ということであり、換言すれば「何かを実行しようとする者は、雑音に耳を貸すことなく己を信じて歩むのみ」ということである。「行蔵は我に存す」を「行蔵は我にあり」ともいうようである。
 私はこの「行蔵は我にあり」という言葉は大変好きで、成人になってから、何か判断に迷った時に、自分にこの言葉を言い聞かせて、自分の行動を律して来た。
 私はそれほど意固地な人間ではないと思っているものの、時には意に沿わないことには節を曲げてまで膝を屈することを潔ぎよしとしないことがある。
 損な性分だと思うが、こればかりはどうしょうもない。

 サラリーマン生活に別れを告げて研修講師になったのもそのせいと言える。
 私は今から30数年前、埼玉県坂戸市にあったソニーボンソンという会社に勤務していた。その会社で私の前任地であるソニー木更津という会社から「出向」の形で、この会社に来ていた私の長年の友人である赤荻敏治氏の処遇を巡って、私の上司である北島さんというこの会社の社長と意見が対立したことがある。
 赤荻氏は出向期間2年という約束で、この会社の資材管理部の立て直しのために来てもらっていた。この出向には私が密接にからんでおり、ソニー木更津の社長である田村さんという方との間で、2年の出向期間を終えたら、赤荻氏はソニー木更津のしかるべきポストに迎え入れるという約束で出向してもらっていた。
 赤荻氏の努力もあって資材管理部の業務の整備は順調に進み、彼は満2年を迎えたら、ソニー木更津にカムバックできると思っていた。私は、北島社長に赤荻氏の出向期間がもう少しで終わることを告げた。すると、北島社長は君は何を言っているのだという調子で 「2年経ったら木更津に戻すなんて昔の約束だ。赤荻君には引き続きウチで働いてもら おうじゃないか。君からそう話しておいてくれ。何かまずいことでもあるか?」
 「いや、彼は2年の約束で家族を木更津に残して単身赴任で来ているんです。期間を延 ばすのはうまくないです。約束違反になります」
 「人事ではこの程度の約束違反はよくあることだよ。君が話せないなら俺から話そう」 「いえ、この出向はソニー木更津の田村社長も一枚噛んでいますので、田村社長と話を してください。約束は守るべきだと思います」
 「実は田村さんとはすでに話がついている。田村さんは『そちらで必要でしたらどうぞ お使いください』と言ってくれている。今更木更津に帰っても、適当なポストがないと も言っている」
 「本当ですか。それはないですよ。一応、赤荻さんの気持ちも聞いてみます」

 そういうやりとりがあり、私は自席に戻り、赤荻氏の意向を確認すると、当然のことであるが、彼は「木更津に戻りたい」と言う。
 そこで、その日の夜、ソニー木更津の田村社長に電話して北島さんが私に語ってくれたことの真偽を確認すると「今井さんには申し訳ないが、北島さんの言われる通りだ。こちらに戻って来ても適当なポストがない」と言う。「それはないです。私は赤荻さんにウソをついたことになります。男の約束を守ってください」と言うと、「分かりました。何とか考えてみましょう。またご連絡いたします」と言うので、その日は一安心してぐっすり眠ることになった。
 翌日、出社すると、北島さんが「今井君、こっちに来てくれ!」と社長室に呼ばれた。 普段は「今井さん」だが、この日は「今井君」だった。社長室に入ると北島さんは顔を真っ赤にしてつかみ掛かるような調子で私に話す。
 「君は昨夜、ソニー木更津の田村社長に電話しただろう。余計なことをするな!」
 「いや、私は当初の約束を確認しただけです。一度交わした約束は守って欲しいとお願 いしただけです」
 「それが余計なことだ。君はいつから社長になったのだ。田村社長は君からの電話に大 変困惑したということだ。二度と電話させないでくれと頼まれた。だいたい君は俺の部 下だ。俺が指示したことを忠実にやってくれればいいのだ。下らない理屈は言うな」
 「確かに私はあなたの部下ですがこの決定はおかしいと思います」
 「青臭いことを言うな!」
 この後、北島さんの「人事権は俺にあるのだ・・・・」といった理屈にならないようなことを話すのを聞き流しながら、一度交わした約束を破ることを恬(てん)として恥じないこの人と、これ以上、話しあっても無駄だと思い、「分かりました」と言って引き下がることにした。
 北島さんは苦労人ではあったが、人格的には尊敬できる人物ではなかったので、このようになるのは仕方ないとしても、「考えた上で連絡します」と約束したのに関わらず、北島さんに「今井には電話させないように」と依頼したソニー木更津の田村さんの変身ぶりには失望した。田村さんに再度電話しようかと思ったが、状況は変わることはないだろうから止めることにした。
 その日は寝床に入って自分の言動は間違っていなかったかどうかを自問自答した。そして、(私は間違っていない。間違っていないと思うことを主張しても容れられないこの状況から脱するべきだ。そろそろこの辺りで生き方を変えよう)と思った。

 数日後、再就職先を見つけた私は北島さんに退社の申し入れをした。「先日の件を根に持っているのか?」と聞かれたが、「自分は45歳までの間にサラリーマン生活にサヨナラをしようと思っていたので、いい機会を与えていただき感謝しています」とだけ告げた。 この時の私の年齢は満44歳であった。
 北島さんに告げた後、この会社への異動の世話をしてくれたソニー本社の人事部長の高橋敏夫さんにも退社する旨を伝えた。高橋さんには引き止められ、ソニーグループの他社への異動を世話すると言われたが、「行蔵は我にあり」と言う言葉こそ出さなかったが、慰留はありがたいが、自分が正しいと思ったことを貫くことができないサラリーマン生活をこれ以上続けたくないと話して他社への異動の話は丁重にお断りした。
 約束を守ることができず迷惑をかけてしまった赤荻氏には私の力不足を詫びた。

 我を通してばかりでは何かと損することは多いと思うが、どうしても譲れないことがあり、我に「理」(ことわり)があると思ったら大いに主張するべきであると思う。
 正しいことをねじ曲げるようなことに反対して、「青臭い」と言われても「青臭い 大いに結構」と開き直って自己主張するべきである。
 主義主張だけでなく、生き方だって、人に迷惑をかけないのであれば、「行蔵我にあり、毀誉は他人の主張、我に与らず」と正々堂々と歩むべきである。
 サラリーマン生活に別れを告げたが、その後の人生で、自分の思うところというか、存念というか、それが受け入れてもらえない場面は多少あったが、ささいなことであれば妥協したが、肝心の場面では我意を通して生きてきた。よって後悔することの少ない人生を歩むことができたので、「行蔵は我にあり」を通して来てよかったと思っている。










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